《欧亚美术》  犍陀罗艺术 

Gandhara Antiques specialty shop
 

■店舗案内

■ご注文方法

 Column

COLUMN 2


ガンダーラ
秘話(1)

シッダルタ太子 大理石、
伝ペシャワール近郊出土、
h.58cm

George Ortiz Collection(
スイス)
 


 世界的に有名になった大理石製の大きな菩薩の頭部です。第
1話は、この頭についてお話しします。
 

今をさかのぼること、30年になんなんとします。パキスタンの相棒から電話が入り、「すごいギリシャ風な大理石の頭がでたからすぐ来い」という。すごいものがでたなら行かないわけにはゆかぬ。そのときはドバイ経由でペシャワールに直行したと思う。5月でもすでに真夏の暑さだった。

ペシャワールにはシンワリ・マーケットというアンティーク・マーケットがある。中央が吹き抜けになっていて5階まである。間口が12m、奥行3mぐらいの小さな店がひしめいている。100店舗はあるだろう。半分がアフガン人ではなかろうか。アフガンからの難民の古美術商である。難民にはこれといった仕事がなく、古美術商になれるのはラッキー中のラッキー。それなりの美的センスと商才がなけれななれるものではない。中にはゼロから出発して、長者になった古美術商を何人も知っている。

パキスタンには、ガンダーラ以外これといった古美術品はないが、アフガンには古今東西からのいろいろな古美術品が出土する。正に文化の十字路である。アフガンは古美術品の世界の宝庫だと私は思っている。

古代バクトリアの紀元前2000年頃のものには瞠目するものがある。あるとき胴体の長さが25cmぐらいのブロンズの山羊を見せられたことがある。子山羊が三頭。まとめて買えと言う。まとめて4万ドル。当時の私にはとても買える額ではなかったが、メトロポリタン美術館にもないようなものであった。

アフガンの政治的混乱によりほとんどの古美術品は、カイバル峠を越えて、ここペシャワールに集まってくる。越えるといっても、税関を遠巻きにロバに乗せて国境の山を越えてくるようである。それらがこのシンワリ・マーケットに集まってくる。

マーケットに入る入口近くにHの店はある。間口1.5m、奥行2mの小さな店の入口にHは座っていた。無口なぼそっとした大男、大理石の菩薩の大頭の所有者である。

私のパートナーと長々と話していたが、何を話しているか私にはわからない。しばらくして次の日彼の家で大理石の頭を見せてくれることになった。

あとで聞いたことであるが、ある日彼の店に、工事現場の男が彫刻のある大理石の破片を売りに来た。ペシャワール空港の拡張工事現場から出たとのことであった。Hは安くでその破片を買い取った。次の日またもう一つの破片を入手。何日かの後にこの写真の頭部ができあがったのである。Hは自分では言わないが、恐らく合計数百ドルでこの頭を入手したであろう。

ちなみに大理石には黒く焼けた所が多数ある。レンガ工場のあった所から出たそうな。納得である。(つづく)

 
 

 

 Copyright(C) 2005 Eurasian-Art Inc. All Rights Reserved.